性感染症といっても種類は様々です。そのそれぞれがどのような病気であるのか解説します。まずは、STI(性感染症)とは何であるのか知って下さい。それが、自分と愛する人の身を守る、第1歩です。
性感染症とは
性感染症とは、セックスによって感染する病気のことをいいます。性感染症のことをSTDまたはSTIということもあります。性感染症の原因はウイルスや細菌など様々で、たった1度のセックスでも感染する可能性があります。性感染症は、ペニスを膣(ちつ)に挿入するセックス以外にも口を使ったオーラルセックスや肛門を使ったアナルセックスでもうつることがあります。ただ抱き合うだけでもうつってしまう性感染症もありますので注意しましょう。
そしてもう一つ、もし自分が性感染症にかかっていることを知っていて、そしてセックスをして相手にうつしてしまった場合、傷害罪で告訴されたり、損害賠償請求の訴えを起こされたりする可能性もあるようですよ。このようなことも考え、症状がある時や症状がなくても彼や彼女が変わった時には検査をしましょう。そうすることによって、自分を守ることもできますし、潔白を証明することにもなります。
性感染症には潜伏期間(せんぷくきかん)がある
潜伏期間とは、感染してから症状が出るまでの期間 のことをいいます。ほとんどの性感染症には潜伏期間があります。
性感染症にはどんなものがあるのか!
クラミジア
●クラミジア・トラコマチスという菌が原因で発症します。最近の性感染症の中でもっとも感染者の多いのがクラミジアです。女性の場合は70%以上が自覚症状が出ません。男性の場合も、半分は症状が出ません。クラミジアに感染している人の6割がオーラルセックスによってのどにも感染していると言われています。
● クラミジアに感染すると、クラミジアに感染していない人に比べ、4~5倍もエイズウイルス(HIV)に感染しやすくなります。「エイズの前にクラミジアあり」と言われているほどです。
潜伏期間 | 1~3週間 | |
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症状 | 女性 | (1)自覚症状なし (2)おりものが増える (3)排尿時(おしっこの時)に軽い痛みが出る (4)お腹が痛くなる (5)おりものが臭う |
男性 | (1) 尿道口から透明の分泌物が出る (2)排尿時(おしっこの時)に軽い痛みが出る (3)むずむずする感じが出る (4)かゆみが出る (5)陰嚢(いんのう)がはれる (6)陰嚢(いんのう)に痛みが出る (7)発熱するetc… |
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治療 | 飲み薬の抗菌剤を1~2週間程度服用する |
淋病(りんびょう)
●淋菌(りんきん)という細菌によって発病します。女性よりも男性の方が自覚症状が強いのが特徴です。オーラルセックスによって淋菌がのどに感染して咽頭炎(いんとうえん)を起こしたり、目にうつって結膜炎(けつまくえん)になったり失明したりすることもあります。
潜伏期間 | 2~9日 | |
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症状 | 女性 | (1)おりものが黄色い膿(うみ)のようになる (2)おりものに悪臭がする (3)おりものが増える (4)お腹が痛くなる |
男性 | (1)排尿時(おしっこの時)に焼けるような強烈な痛みが出る (2)尿道から黄色い膿(うみ)が出る (3)陰嚢(いんのう)がはれる (4)陰嚢(いんのう)に痛みが出る |
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治療 | 抗菌剤の筋肉注射をする。飲み薬の抗菌剤を2週間程度服用する。 |
ヘルペス
●単純ヘルペスウイルスというウイルスによって起こる病気です。ウイルス性の感染症としては多い病気で、日本人の3分の1の人がこのウイルスを持っているといわれています。1度治療をしても、感染したウイルスはそのままからだの細胞に住みついてしまうことがあります。その場合、疲れがたまったり長期的なストレスをうけたりすることによって、からだの抵抗力が低下すると再発してしまうのです。しかし、寝不足にならないように、そして健康に注意していればたいていは再発しないままでいられます。1つ注意しなくてはいけないことは、出産する時に、外陰部に水ぶくれや潰瘍ができていると赤ちゃんに感染してしまい、赤ちゃんが死んでしまうこともあるため、帝王切開による出産が無難になります。
潜伏期間 | 2~10日 | ||
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症状 | 女性 | (1)外陰部のまわりに米粒大の水ぶくれがいくつもできる (2)皮膚の表面が破れて痛みをともなう潰瘍ができる (3)熱がでる |
性行為以外でも、患部にさわると感染してしまうので注意が必要ですが、水ぶくれや潰瘍ができていなければ、さわってもうつることはありません 。 |
男性 | (1)亀頭や包皮に小さな水ぶくれができる (2)痛みをともなう潰瘍(かいよう)ができる (3)熱がでる |
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治療 | 飲み薬の抗ヘルペス剤を5~10日間飲んだり、軟膏(なんこう)を患部に塗る。 再発を繰り返す方は、少量を持続して飲むと再発を抑えられます。 |
尖圭(尖形)コンジローム
●ヒトパピローマウイルスというウイルスが原因で起こる病気です。1度この病気にかかると再発することも多いので、そのたびに治療が必要です。
潜伏期間 | 数週間~数ヶ月 | ||
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症状 | 女性 | 膣や小陰唇(しょういんしん)、肛門や尿道口のまわりにイボができます | そのままにしておくと、性器のまわりに薄茶色のイボがびっしりと広がってしまいます。このイボは、においはなく、かゆみや痛みもほとんどありません。 |
男性 | ペニスや亀頭、包皮、陰嚢(いんのう)、肛門のまわりなどにイボができる | ||
治療 |
トリコモナス
●トリコモナス原虫によって発症する病気です。30~40代の女性に多くみられ、全体では減少しつつあります。セックスによる感染のほか、お風呂やトイレ、タオルなどを経由してうつることもあります。また、手や指などを経由することもあるので、手で相手の性器をいじったりしてうつってしまうこともありますから注意が必要です。
潜伏期間 | 4~20日 | |
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症状 | 女性 | (1)おりものが黄色くなる (2)外陰部がかゆくなる (3)おりものに悪臭がする |
男性 | (1)自覚症状なし (2)尿道炎を起こす |
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治療 | 抗原虫薬を2週間程度服用する。女性は毎日膣錠を膣に挿入する |
カンジダ膣炎
●カンジダ膣炎は女性なら誰でもおこる可能性のある病気です。カンジダ・アルビカンスというカビの一種が原因で起こる病気です。このカビはごく普通に膣やのどなど、人のからだに寄生しているもので、普段はとくに問題にならないものです。しかし、体調が悪かったり疲れていたり、風邪などで抗生物質を飲んだときなどにこのカビが膣の中で増殖します。このようなことから、必ずしも性感染症とは言えません。
潜伏期間 | 各人の体調によって違います。 | ||
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症状 | 女性 | (1)外陰部がかゆくなる →痛くなることもある (2)白いノリのようなおりものが出る →ひどくなると白くボロボロとしたカッテージ・チーズまたは酒かすのようなおりものになる |
カビが広がると外陰部のまわりの皮膚がただれたり、白いカビがついたりします。石鹸で洗い流そうとするとよけい悪化するので、注意しましょう |
男性 | (1)症状がでない (2)亀頭やペニスなどがかゆくなる (3)尿道炎を起こす |
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治療 |
エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)
●からだを病原菌などから守ってくれる免疫システムが壊れてしまう病気で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって発病します。感染していても発病前の人をHIV感染者といい、発病後の人をエイズ患者といいます。現在のところは、完全な治療薬や特効薬はまだ開発されていませんが、早めに発見できて生活を規則正しくして抵抗力をつけておき、複数の薬を組み合わせたカクテル療法という治療法をおこなうことによって、発病や病気の具合を抑えることができるようになっています。
●注意が必要なことは、クラミジアなどにかかっている場合には、4~5倍もHIVに感染する可能性が高くなること、そしてもう1つ、仮にHIVに感染している状態で、他の人の違った形のHIVが自分の体の中に入ると、それまでは発病しないで普通の生活がおこなえていたのが、急に発病をして状態が悪くなってしまうこともあるということを知っておきましょう。
注意・・・感染してから血液の検査の反応が出るまでに6~8週間かかるので、“もしかして!”と思った行為があったときから2ヶ月後以降に検査を受けましょう。
潜伏期間 | 平均して約10年 | HIVに感染しても、2~4週間後に熱や頭痛などの風邪のような症状が出ることがあるくらいで、発病するまで、感染に気づかないまま過ごしてしまうことがほとんどです。 |
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症状 | (1)熱が出る、下痢、寝汗などの症状が出る (2)体重が減る (3)体がだるくなる (4)免疫力が低下して、感染症をおこしやすくなる |
→病気がすすむとカリニ肺炎(微生物が肺に寄生しておきる肺炎の一種)や結核などの病気にかかったり、カポジ肉腫(皮膚や内臓に斑点やできものができるガンの一種)という悪性腫瘍ができる。 |
治療 | 完全な治療法はない。ただし、化学療法によって発病や病気の進行を抑えることはできます。 |
梅毒(ばいどく)
●梅毒トレポネーマという微生物が原因で起こる病気です。昔はたいへん広まっていた病気でしたが、最近では感染は少なくなっています。あまりひどい状態になることは最近ではめったにありませんが、それでも、そのままにしておくと脳や心臓などに重い障害を起こす可能性もあります。また、梅毒にかかったまま子どもを産むと、赤ちゃんも梅毒に感染してしまうこともありますので、あらかじめ検査、治療をしておく必要があります。
潜伏期間 | 3週間ほど |
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症状 | (1)梅毒に感染して3週間ほどたつと ・・・性器に赤くてかたい腫れ物 ができる →潰瘍になる→2~3週間で腫れ物はなくなる(2)梅毒に感染して3ヶ月ほどたつと ・・・全身に赤みや発疹ができる (人によっては髪が抜けることもある) →症状はいったん消えたり、また再発したりする(3)梅毒に感染して3年ほどたつと ・・・皮膚にゴムのような腫れができる ⇒このころにはからだの中の内臓に病気が広がっている(4)梅毒に感染して10年ほどたつと ・・・心臓や血管などにも障害が出たり、脳を梅毒の菌が侵して、精神の異常を起こすこともある |
治療 | 抗菌剤を3ヶ月間服用する。ただし、病気が進行すると、治療に1~2年かかることもある。 |
B型肝炎・C型肝炎
●B型肝炎は、B型肝炎ウイルスによって発症する病気です。血液感染といって輸血や注射針のまわし打ちなどによって血液を介して感染するものが多いのですが、セックスでも感染します。C型肝炎も性感染の可能性があるともいわれています。C型肝炎はB型肝炎に比べて、治療してもその後の経過が悪く、死に至る可能性がB型肝炎よりも高くなります。B型肝炎もC型肝炎も、症状がいったん消えてもウイルスはからだに残ることがあります。肝臓ガンなどの病気の原因になるともいわれています。
潜伏期間 | 50~180日 | |
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症状 | (1)発熱や吐き気が出る (2)全身がだるくなる (3)黄疸(皮膚や粘膜が黄色くなる)が出る |
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治療 | 安静第一。症状があれば点滴や内服薬を服用する。 |
毛ジラミ
●毛ジラミもセックスによってうつるもののひとつです。皮膚の接触だけでもうつってしまいます。毛ジラミは陰毛の毛根などに寄生します。
潜伏期間 | 3~7日 | |
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症状 | (1)激しいかゆみが出る (2)ふけのような灰色っぽいものがつく |
かゆみや痛みがでてきたら、 白い下着をつけてみて下さい。 毛ジラミがいると、黒いフンや皮膚から血を吸った赤い斑点が下着につくので、かんたんに発見できます。 |
治療 | 毛を剃る。薬用せっけんで洗う。軟膏(なんこう)を塗る |
※女性が産婦人科を受診するときは、内診で下半身をみてもらうことになるので、パンツスタイルやタイトスカート、タイツ、ストッキングはさけ、フレアーのロングスカートで靴下というような、脱ぎ着のしやすい服装がいいですよ。
参考・引用文献
ガールズガード(WAVE出版)
自分のために、パートナーのために(日本ワイスレダリー株式会社)
話し合おうAIDS(エイズ予防財団)
性感染症(少年写真新聞社)